事の始まり

QOL

その病気を見つけたのは、以外にも専門外の医師でした。

実は以前から部分的な違和感はあったんですが、まさかそんな状態など予想もしていませんでした。

部分というのは口の中、上顎の辺りです。

以前からというのは、数か月とかいう単位ではなく何十年という「以前」です。

若いころから大酒のみで、タバコもヘビーな方だったので、それが原因で炎症を起こしているんだと勝手に決め込んでいました。

かかりつけの外科/内科の医師は、ヘビーな喫煙のせいで喉が痛んで何度も痛みを訴えましたが、抗生剤を処方するだけで、私もそれで治まっていたのでさして深く考えなかったのです。

タバコを吸うので定期的に歯の汚れを取りに歯科に通っていましたが、一昨年(2015年)の11月頃に歯科へ行った折に、若い担当医が口の中の荒れを見て、一度専門医にかかって下さいと真面目な顔で言いました。

なんとなく気になって、その足で耳鼻咽喉科の医院へ行くと、診察後医師より再度入室するようにとのことで、紹介状を書くので病院で精密検査を受けて下さいと言われました。

こりゃいよいよ悪い病気か?となんとなく嫌な予感がしましたが、その日もたらふく飲んで、プカプカタバコを吸って、まあそのうち行けばいいかとのんびり構えていました。

さて数日後地元の中堅どころの紹介状にあった病院へ出向き、耳鼻咽喉科で各種の検査を受けていったん帰宅、数日後に再訪すると、医師から病名が告げられました。

「右上顎部口蓋癌」なんと....口の中の違和感のあるただれは癌だったのです。

医師にステージや治療法、あるいは放置すればあとどれくらいは生きられるかと率直に聞くと、ステージ4、治療法は今のところなんとも言えない、放置すれば転移するだろうし、まあ長くて2年という回答、それもにやにや笑いながら返答するもんで、ムカッとして、「あんたのとこでは治してもらわないよ、他へ行くから紹介状を書け」

と医者が驚いて椅子から立ち上がるほどの大声で怒鳴りつけました。

紹介状は後日知人が取りに行ってくれ、診察費も払ってなかったよと笑われましたが。

紹介状には「なるべく早く設備のある大手の病院を受診するように」といくつかの病院名が書かれていました。

この時にすぐに信頼のおける医師に相談できれば良かったのですが、かかりつけの外科/内科にも長年の間この病気にも気づかなかったという不信感があり、また歯科から言われて行った耳鼻咽喉科もさほど知っているわけでもなく、友人に医師はいるがまるで専門外で、ましてや遠方である。

ここでQOLに関してのひとつめの躓きがあった。

病院を決めて、その病院で疑問点や不安な点、どのような治療方法があるのか、どんな後遺症が予測されるのかなど質問すればよかったのであって、そこに全く気付かなかった自分が悪いのである。

身寄りとてなく相談もならず、まあなるようにしかならんと自棄になりそれから2か月ほど酒浸りの日々が続いた。

ある種の自殺であると言える。

いやこのまま死ねばよいと思ったのは事実である。

そこへ考えが向かったのは、病気のみではなくそれなりの各種の事情が複雑に絡んでいたことも原因だったのだろう。

QOLの第一歩は、自分と正直に向かい合って、誰かに、できれば専門医に相談することである。

命をなくせば、その後に起きるであろういろんな出来事にも対処できない。

命があれば、どのような事態にでも対処できる。

気弱になることがまず第一の問題点である。