逝ったあいつ/やって来たこいつ
5月30日に15歳と8ヶ月の天寿を全うしたニキ(仁吉)
最後まで自力で立ち上がって用を足すほどの健気さと男らしさを見せ、一瞬の痙攣の後優しい顔で旅立った。
長い長い付き合いだった。
俺が癌で死にかけているときも、じっと家で待っていた。
毎日面倒を見てくれる人はいなかった。2,3日に1度水、餌、トイレの世話は頼んであった。
逝ったのは俺の誕生日、20日を待ってくれたかのように30日だった。
こいつが人間だったら、男が男に惚れたというところだっただろう。
今年の夏だった。
ネットであれこれ見ていたら、酷い環境や、捨てられた、ブリーダーのお役御免や体に不自由があったりするペットたちの紹介サイトに入り込んでいた。
保険所に保護されたが、処分まであと数日という犬。
飼い主が虐待した猫や犬、目が見えない犬、いろんな逆境にいるペットたちを見た。
一人暮らしの身には、逝ったあいつが懐かしい。
外出先から帰っても出迎えるあいつがいない。
49日が明けるのを待ってサイトに連絡をしてみた。
何度か応募もしたが縁がなかった。
諦めかけていた時に、以前にも申し込んだ紹介者の方がブリーダーがその方に預けた今度来たこいつを紹介していた。
早速応募すると、とんとん拍子に話が進み、8月20日にやって来た。
小さな体で、すぐにそばに来て体を摺り寄せてきた。
まるで逝ったあいつがよくしたように。
名前は同じニキ、ただし女の子なんで仁希の字を宛てた。
仲良くやっている。
暫く頑張って生きなければならなくなった。